腰椎分離症で悩む中学生バスケ選手は多いものです。
腰椎分離症となってしまうと中学生にとっては長期離脱となってしまうケースが多く、医療機関でもコルセットをつけて運動中止の指導となってしまいます。
ただシチュエーションによっては骨癒合が厳しい点もあるので、コルセットをつけて運動を中止したからといって改善するかというと改善されずに痛みは再発してしまうケースが多いと感じています。
その選手は何が問題で腰椎分離症になったのかそのストーリーを確認して、問題となっている腰椎分離症の原因を突き止めないと解決策は見つからないのです。
病院を受診する時期や症状の初期段階であれば理解できますが、腰椎分離症だからとただコルセットをして運動を中止しても筋力が落ちてしまい、競技レベルも下がってしまい、解決策としては問題となってしまいます。
今回対応させていただいた選手も長期離脱して2度目の発症でどうすればいいか分からず悩んでいた所に紹介で私の所にたどり着いた形でした。
私は現在プロバスケチームでアスレティックトレーナーとして24年間活動しています。ベテランの立場でプロ選手のメディカルを任されています。小学生から大人までの全てのカテゴリーを対応してきた経験があるので今回の腰椎分離症の方にも参考になるかと思います。
腰椎分離症は起こるべくして発症してしまう典型的な症状です。
原因となっている点を改善しなければいくら休んでも再発してしまう点を理解しなければなりません。
【結論】
・腰椎分離症は成長の過程で骨盤の動きが悪くなり腰の一箇所に負担が増加して発症しやすい
・問題となっている原因を見つけて解決策を実行していくことで負担が軽減して改善に向かう
・治療も必要であるがトレーニング要素も必要となる
・競技復帰に対して体を守る体幹が競技中に機能していなければ再発する
・段階的にチーム練習に戻して翌日のダメージを評価しなければならない
・中学生から競技を奪うことの方が腰痛よりも精神崩壊につながってしまう
・どうアプローチして選手のマインドセットをしながら対応するかがキーポイント
体を触る前に状況を聞き、ストーリーを知ることでアプローチも変化していくのと実際のバスケットボールの動きを見ることで問題点や改善点と体を触った時に問題点が一致すると解決策が見えてきます。
目次
中学2年生の腰椎分離症で悩むバスケ選手

今回相談があったのが栃木県宇都宮市で活動しているプロバスケチームのユースチームの選手でした。
そのチームで活動している保護者の方から、腰椎分離症で悩んでいる選手がいるのですが対応してあげて欲しいとのことでした。
中学2年生の夏に1ヶ月以上練習を休んで秋からバスケットボールの競技復帰をしたのですが、再び悪化して競技を諦めることまで考えていたそうです。
かなり悩んでいたようで私の所に連絡がありました。
他チームの選手の対応
ここで一つ問題があり、私も別のプロチームで活動しているため、関わっていいのかという点があります。
私自身以前に6年ほど宇都宮のチームではプロのトレーナーとして活動していた経験があり、ユースのコーチは元チームメイトでもあったので対応させて頂く報告はさせていただきました。
プロチームのユースチームは私も関わっていますが、時間での制約があるためなかなか一人に対して治療や対応することが難しい現実があります。
プロチームのトレーナーはその辺りがジレンマとなっている方はとても多いのかと感じています。
自チームの理解に感謝
今回別チームの選手を対応するにあたり、チームの関係者にも確認して許可していただきご理解していただけたことは大変ありがたいことでした。
またチームの施設を利用させてもらった事も感謝しかありません。
プロチーム所属ではなかなか対応する場所に限りがあって実施できない点があるのでその辺りが難しい点です。
特に中学生ではフィットネスジムを年齢で利用できない点があるのでかなり難しいことがありました。
私のスタイルは実際にバスケットボールのプレイをしている姿を映像でもいいので確認することでイメージにつながり状況の把握と問題となっている動作習慣の確認によって導き出せるので体育館を活用できた事も大きなポイントとなりました。
ちょっと動いた動作と激しく動いた動作では負荷やバランスも異なるのでこの辺りの情報が重要となります。
2度目の症状発生
今回対応した際は腰椎分離症の2回目であったこと、話を聞いてしばらく休んでいたので痛みは軽減していた事などもあり、症状に対しての原因を突き止めやすいシーンがあり解決策を導きやすい状態でありました。
本人と保護者は心配していましたが、問題点が明確でしたのでそこをアプローチすれば改善のイメージがついたこと、本人が大変努力してくれたことが大きな改善へと発展できたと思います。
最善のアプローチ方法を提示しても、選手自身がしっかり行わずにサボっていたり、セルフケアを実行しないケースでは自分のイメージ通りに進んでいかないのです。
その時に何が原因で進行が遅いのかが判断しにくい点につながります。
・アプローチ方法にズレがあり進行が遅くなっているのか?
・選手自身の取り組みが一生懸命努力していないのか?
・選手が頑張りすぎてやりすぎてしまって悪化しているのか?
このようなバランスもあるのです。
毎日のように対応すれば日々良い状態にしていけますが、たまにチェックする程度でしか関われないとズレが生じるものです。
動作に大きな問題を発覚

今回の選手はバスケのスキルが高く、下級生でも主力として活躍するレベルの選手でありました。
バスケットボールの動作ではそこまで大きな問題はないものの、筋力不足があり、バスケットボール中に機能していない点がありました。
骨盤の動きに問題
最も大きな問題は骨盤の動きが極端に悪かったことです。
急激に身長が伸びたというストーリーもあり、成長過程で大腿骨の成長が著しくなることで、筋肉の硬さが目立つ年代が中学生です。
まさに典型的なタイプで骨盤の動きができず腰への負担がかかってしまう状態であり、ここを改善しなければ腰椎分離症としての腰の痛みは取れないままであることが明確でした。
股関節が顕著に硬い
股関節の可動域も極めて悪く、痛くなって当たり前という状態でした。
股関節は球関節といって丸い関節の構造になっています。
その構造であらゆる方向へ動かすことができるのです。
その機能が大きく制限されていたこと、骨盤と腰椎の動きも悪かったことを改善して、体幹をバスケ中に機能させることで腰への負担を軽減させていくこと、背骨を全体的に動かせるようにして負担を分散させることが解決策として提示できたわけです。
治療よりも動作改善が必須

治療はその時に1度しただけで、私の方では日程的に対応できないので地元の知り合いの接骨院を紹介しました。
腰の筋肉の硬さもありましたが原因は明らかに動作改善することでしたので治療よりも動作改善のためのエクササイズです。
体幹が明らかに弱い
中学2年生なので体幹が強いかというと皆弱い状態なのが基本です。
特に身長が急激に伸びている選手は安定感が弱い傾向です。
ただチームでも体幹のトレーニングを行っているということで基本的なドリルをやってもらうとしっかりできます。
では動きをつけるとどうかとなると途端にできなくなってしまいます。
要するにトレーニングはしていたものの、バスケットボールの競技中に機能していなかったので、腰を守るためのアプローチにはなっていなかったということです。
この辺りはレベルが高くなるので、なかなかトレーニングの本を読んだからといって強化されるわけではなく、指導をしっかりと受けていかなければならない専門的な領域です。
治療ではなく動作改善と強化
腰椎分離症は成長痛としても提示できるかと思います。
成長過程によって動作制限か起こり、競技で繰り返し起こる負担の集中によって疲労骨折として発症する障害です。
筋肉に対してアプローチする方法にも様々あり、マッサージは筋肉を柔らかくする大きな目的があります。
よくマッサージをしても治らないという方がいますが、筋肉のシコリや張り感を軽減させるにはマッサージで改善できます。
ただし普通のマッサージではなく特殊なテクニックが必要となります。
何でもかんでもマッサージを否定することはタブーで特殊なテクニックも存在しています。
ただし障害に対してのアプローチはマッサージだけではなく、筋肉の動きを改善する、筋肉への負担を軽減させるという点にも配慮しなければいくらアプローチとても解決策にはならないわけです。
ここで問題となる点があります。
・選手の柔軟性低下
・選手の筋肉のバランスによるアライメント不良
・選手の筋力不足
・選手の筋持久力不足
・選手の筋機能不足
・チームの練習量
・チームの練習強度
・チームの練習メニュー
このような要因によって障害として発症してしまうわけです。
一つ一つ要因であろう原因を潰していくことで再発を防ぐことが可能となります。
痛みがなくなったから練習をすべて参加してしまうとまた痛くなってしまう理由はここにあります。
オンラインでの指導
この選手を治療したのは私は1度だけです。
それよりもエクササイズを継続的に実行させる必要があったのです。
しかし、確認するタイミングは極めて低く、とった手段は動画にて解説することとオンラインでのチェックでした。
エクササイズの動画化
動画を編集してやるべきことを明確化して実行してもらう。
それには中学生は覚えきれないです。
なぜこれをやる必要があるのか解説付きで動画にして提示することで本人にとってイメージして実行してもらえれば良いわけです。
オンラインで動作チェック
とにかくエクササイズのチェックから動作確認、さらに段階的に負荷を上げていくメニューのアップグレードをしていかなければならない為2週間に1度程度ですがオンラインでの確認をして新たなエクササイズを伝えることを何度かしました。
その結果、チーム練習の参加も段階的に対応してもらい、1ヶ月もかからない程度で競技復帰してその後問題にならずバスケットボールができているとのことでした。その後も腰痛になることはないとのことで対応できたのかと思っています。
パーソナルトレーニング
中学2年生の3月末に大きなBリーグU15の大会があったので映像で動きの確認をして腰痛の再発がないか確認をしました。
腰痛よりもバスケットボールのスキルと体の使い方など競技パフォーマンスとしてこの練習をした方がいいよとアドバイスさせていただきました。
そのあたりも有効だったようで、その後個人的にトレーニングも対応することとなりました。
本人ももっとバスケットボールが上手くなりたいと強く願っていること、中学3年生からはトレーニングをしっかり行うための動きづくりの基礎を作る時期に適しているのでちょうど良いタイミングであったことです。
ここで問題なのが、スポーツジムでマンツーマンで行いたかったのですが、中学生はどのジムも入会できないという欠点があることに気づきました。
そこでチームのジムを活用させていただけたことはとても大きなポイントとなりました。
なかなかタイミングが合わないこともあり、月に1度程度の関わりとなってしまいましたが、高校生に入ってから本格的にトレーニングする際にトレーニングによって怪我をしてしまうケースも多い現実があります。
いかに基礎のベースを作るかで高校に入ってからの伸び代に大きく関わっていくので、中学3年生の時期から動作やトレーニングの免疫力を作りつつパフォーマンスを向上させることで意識改革やモチベーションに大きく影響していきます。
特に上手い選手は高校入学してすぐに1年生から試合に出場するとまだ体ができていなく、強化する事ができなく怪我をしてしまうケースがとても多いのです。
このような配慮も含め中学3年生から体づくりを時間をかけてベースを作る事で即戦力としても対応でき、身体能力、競技力、パワーなど高校生の年代で発達する要素のバランスが整い飛躍的に向上できる土台になります。
バスケに必要な基礎体力不足
バスケットボールをやっている中学生は80%は細い選手ばかりです。いかに体重を増やしていくかがとても難しい点です。
食べること、トレーニングすること、競技力に繋げること、身体能力を向上させること、神経系の発達も促進させることなど様々な要素が関係していきます。
中学3年生になれば体重だけでなく、体脂肪率や筋肉量を意識させて、とにかく食べる量を増やす胃袋のトレーニングも必要となります。
練習と食事とトレーニングによって体の変化を数値化することでイメージしやすくしてあげることでモチベーションにつながるわけです。
中学生ではトレーニングは早く成長の促進を阻害すると思っている方もいらっしゃいますが、トレーニングといってもいろいろなアプローチ方法があり、現在の選手ニーズや状況では中学生からしっかりと準備することで大きな差をつけることができます。実際に先に生まれた方が有利な年代でもありますので、やり方によってはむしろ先に進めていくことで怪我の防止に良い働きも出てきます。
もちろん我流でなく、しっかりと指導する人がいなければ良い結果にはつながらないわけです。
個別でのトレーニング指導
毎回身体組成の測定とトレーニングメニューを実際にやってもらう。機材がなくてもできる環境から開始して徐々に負荷を大きくしていく。
そんな流れで対応させていただきました。
中学3年生の最後の大会の映像を見ましたがとても成長して体づくりのベースは構築できたのかと思えました。
個人的にはバスケットボールを教えてあげたいなと試合を見て感じてしまいましたが、これからの成長が楽しみです。
宇都宮のユースチームへは進まず強豪校へ進む選択をされた為、寮生活となるので私のサポートは終了となりました。
プロチームのユースも大きな組織であり、今後のステータスも期待できますが、まだ高校の部活の方が大会や留学生などの影響もありレベルが高い現実があるので、まずは高校で3年間活躍してプロ選手になれるよう努力を続けてほしいと願っています。
まとめ

今回長期に渡って関わらせていただいた宇都宮ブレックスU15の川岸夏椰人選手は、私の所属する群馬の地元太田市在住なのでこのような対応が可能となりました。
高校での活躍に期待しています。
【まとめ】
・腰椎分離症でも時期にもよりますが競技に影響なく活動できるようになる
・ただ休んでいるだけでは良くならず根本的な問題の原因を改善しなければならない
・そのためには本人の努力なくしては成し得ない
・動作改善には状況によっても異なるが時間が必要である
・継続したアプローチとグレードアップしていく必要がある
・チーム復帰も段階的に行い翌日の状況を確認して調整する必要がある
小さい頃から藤井佑眞選手のファンということでユニフォームにサインをしていただきプレゼント致しました!
プロ選手になる夢を実現してほしいものです。