中学生の年代で起こりやすい腰椎分離症ですが、これを実施しないといつになっても改善しないものがあります。
それが動きづくりです。
いくら治療をしてその時に楽になっても、根本となっている原因が何かを追求しなければ改善していかないのです。
今回は腰椎分離症に必須な動きづくりのエクササイズを10個紹介していきます。
腰椎分離症を改善するには段階があります。
1.動きを出して負担を分散させること
2.悪い動作習慣を改善させること
3.筋力をつけて負担を軽減させること
4.強化した筋力を競技で使えるものにすること
この4つが必要になってきます
私は現在プロバスケチームでアスレティックトレーナーとして活動して24年が過ぎました。U15の中学生の世代やU18の高校生の世代、小学生にも対応していますので、腰椎分離症の選手を対応してきています。
腰椎分離症の根本的な原因となっているものは何かというと動きが悪くなって、一箇所に負担が集中してしまう為に発症して、骨に負担がかかってしまい腰椎が疲労骨折となってしまいます。
疲労骨折からさらに骨が折れてしまい偽関節となる状態が腰椎分離症です。
腰椎分離症は一般的に左右のどちらかに発症しますが、さらに負担がかかった状態だと両側分離症となってしまいます。
両側分離症になると腰椎すべり症という症状になってしまうわけです。
腰椎分離症を発症するメカニズムは個人差もあります。
そのため今回紹介する内容をそのまま実施しても適応する方とそうでない方もいるかと思いますが、基本的な考え方は一致しますのでその辺りを紹介していきます。
【結論】
根本的な動きを見直して改善しなければ腰椎分離症はいくら休んで良くなっても競技復帰すれば悪化してしまう可能性が高いのでまずは動きづくりを改善することが必須となります。
1.ストレッチにて柔軟性を改善していく
2.骨盤の動きを動かせるようにする
3.背骨の動きをつけて動く範囲を分散させる
4.筋肉の使い方を意識して負担を分担させる動きづくり
上記のような点を改善するように心がけよう!
それでは腰椎分離症に必要な動きづくりとして10個紹介していきます。
目次
1.ストレッチにて柔軟性を改善
動きをつけるために必要な要素として筋肉の柔軟性を確保することはとても重要となります。
なぜ動きが悪く一箇所に負担がかかってしまっているかというと、骨の成長に対して筋肉の成長が遅いので引っ張られる働きがあり骨自体に負担がかかってしまう点と運動することで筋肉が疲労して硬く縮まってしまうことによって動きの制限がかかってしまいます。
特に大腿骨の成長が著しいため、骨盤がロックしやすくなりその影響で背骨の動きが悪化してしまい一箇所に負担がかかってしまうことで腰椎分離症になりやすいわけです。
ストレッチを行なって筋肉のゆとりを作ることができないと動き自体が改善しにくいわけです。
5つの部位のストレッチを行なっていくことで動きやすさや関節の動く範囲が拡大されます。
①大腿部前面のストレッチ
②大腿部後面のストレッチ
③お尻のストレッチ
④股関節のストレッチ
⑤腰のストレッチ
1つづつ簡単ですが解説していきます。
①大腿部前面のストレッチ
大腿部の前面には大腿四頭筋(だいたいしとうきん)という筋肉があります。その中でも大腿直筋(だいたいちょっきん)は股関節もまたいで骨盤についています。
最も表面にありますので、最初に左側のストレッチをして表面にある大腿直筋をストレッチしてから、全体的に大腿四頭筋を伸ばすことでより柔軟性が向上します。
②大腿部後面のストレッチ
大腿部後面には大腿二頭筋(だいたいにとうきん)と半腱様筋(はんけんようきん)と半膜様筋(はんまくようきん)という筋肉があります。
大腿部の後面の筋肉をハムストリングスと総称していうことが一般的になっていますので知識として覚えておくと良いでしょう。
特に成長期の選手では硬くなりやすく自分でストレッチしにくい部位となるので、今回はチューブを使ったストレッチ方法を写真の左側に紹介しました。
足先にチューブを引っ掛けることでしっかりと伸ばすことができます。
さらに足を外に開くと内側が伸ばされ、足を内側にすると外側が伸びてきますのでちょっとした走行を変えるだけでもよりストレッチされます。
右の写真ではお尻を伸ばしています。
膝を抱え込むことでお尻がしっかり伸びていき骨盤の動きがよくなっていきます。
この時にお尻を床にしっかりつけることでよりストレッチできます。
③お尻のストレッチ
上記でもお尻のストレッチをしましたが、お尻にもたくさんの種類の筋肉があるので腰椎分離症に負担を軽減させるには必要となります。
バスケ選手ではサイドステップという横への動きや1対1でドライブの初動ではお尻の筋肉を多用するので硬く縮まりやすい部位です。
この柔軟性があるかないかでドライブ力のパフォーマンスにも影響しますのでしっかりストレッチしましょう。
足をコの字型にして頭を膝に倒していきます。
次に足先に頭を倒していきます。
特に足先と頭がつくような柔軟性を確保したいものです。
特に腰椎分離症に移行しやすい選手はこのストレッチが硬すぎる選手が圧倒的に多いのが特徴です。
④股関節のストレッチ
股関節は球関節といって丸い構造のためあらゆる方向へ動かすことができます。
そのためいろんな方向で伸ばすことが理想ですが、今回は特に硬くなりやすい内側に捻る内旋という動きと外に開く外旋というストレッチに焦点を当てています。
左の写真は膝を内側に倒して、自分の逆足を使って押し下げていくストレッチです。
特に足先が開くタイプの方はこの動きが悪くなってしまいます。
次に股関節を開く一般的なストレッチですが、膝が浮き上がってしまうタイプの選手もいるので床に膝をつけるように開いていきます。
ストレッチは無理に行うのではなく、徐々に毎日継続していくと開きも良くなっていきますので継続していきましょう。
この2種類のストレッチによって骨盤と大腿骨の動きもゆとりができてくるので股関節のストレッチは腰椎分離症にとても大切なストレッチとなります。
⑤腰のストレッチ
腰のストレッチは上記の股関節のストレッチと同じ体勢から両足の踵(かかと)を前に出します。
そこから前かがみになると腰の筋肉がストレッチされます。
意外とやってそうで行っていないストレッチなので実施しましょう。
腰の筋肉は中学生の場合、骨盤の動きが悪いことが、悪い姿勢で長時間耐えることでとても硬く縮まりやすくなってしまう傾向があります。
腰の筋肉が硬く縮んだ状態ですと、本来の腰の動きができなく一部分に負担がかかりやすくなってしまう悪循環へとなってしまい、腰椎分離症へ発展してしまいます。
中学生には必須のストレッチの一つです!
【注目】ストレッチは継続することが必須
ここまでストレッチを紹介してきました。
ここでとても大切なことをお伝えします。
中学生の年代で腰椎分離症になってしまうケースの選手はセルフケア不足で発症してしまうことが多い現実があります。
・競技に没頭してしまうこと
・身体に関する知識がないこと
・怪我を経験したことがないこと
・面倒なアイシングやストレッチをおろそかにしてしまうこと
上記のようなことが中学生では当たり前ですが起こってしまいます。
これは仕方がないことです。
ではどうすれば防ぐことができるか
コーチや保護者が指導して必要性を理解させることに尽きます。
競技に関しては集中して没頭して努力を継続できますが、必要性を感じていないものに関してはおろそかになってしまいます。
しかし、腰椎分離症を発症してしまうと大好きな競技から数ヶ月から半年くらい離れてしまうケースもあります。
そうさせないように選手自身にセルフケアを実施させる習慣をつけることが必須になります。
それでも実施できない選手は治療院で定期的なメンテナンスを行うことで専門家の治療によって良い状態をキープして、専門家が適切な対応の指導をしてくれるから意識改革も少しづつ変化していくことも期待できます。
超一流の選手は天才やセンスではなく、努力を継続できる行動力、さらには努力とも感じず情熱を持って行えるマインドの持ち主だと考えます。
2.骨盤の動きを作る
⑥ペルビックティルト
柔軟性がつけば動きも出やすくなるのでここからは動きづくりを紹介していきます。
まずは骨盤の動きを出すためのエクササイズです。
上の写真のように床に寝そべって腰を床と密着させるのが左写真で骨盤を動かし、腰を床と離すように隙間を作るのが右写真で骨盤を動かします。
そもそもこの動きを人生で行ったことがない選手もいて全く動かないということもありますが、毎日実施していれば1週間もすればかなり動きが作られてきます。
20回程度を1日に数回動かしていきましょう。
やったことがない動き、筋肉が硬く骨盤がロックされているタイプはこの動きがとても悪く、そもそもできないという選手が多いのです。
そのため腰の一部分に動きが集中してしまい腰椎分離症になってしまいます。
動きが確認できない場合は両手を腰と床の間に入れると手に触れるので感覚が掴めやすくなります。
寝た状態で動かせるようになれば、次は立った状態でも骨盤を動かせるようにしていきます。
この反りができないと骨盤の動きが悪く、スクワットやパワーポジションの際に負担がかかりやすいこと、パフォーマンスに力が入らず加速などの初動で遅くなってしまうこと、バランスを崩しやすいことがあり、怪我の予防だけでなく、競技パフォーマンスに影響するので骨盤のうごきづくりはとても重要です。
こちらの記事で紹介しています↓
3.背骨の動きをつける
背骨には細かい筋肉がたくさん積み重なって連結されていますので背骨1つづつをイメージはできませんが、そのような意識を持って行うと動きも改善しやすくなります。
背骨は首にある頸椎(けいつい)が7個、背中にある胸椎(きょうつい)は12個でここに肋骨(ろっこつ)がついています。そして腰にある腰椎(ようつい)が5個、さらに骨盤と一体になっている仙骨(せんこつ)と尾骨(びこつ)から背骨は成り立っています。
腰椎分離症は腰を反らせて捻った際に捻った側の腰椎の椎弓が分離してしまい痛みを誘発します。
この原因となるのが腰椎や胸椎の動きが悪いことや使い方が一部分に集中してしまい腰椎分離症を引き起こします。
特に多いのが腰椎の一番下にある第五腰椎で分離症が発症しやすいわけです。
そのため下部にある腰椎には大きな負担がかかりやすいため、動きづくりまたは動作習慣の改善によって背骨全体的に使えるようにして下部腰椎の負担を軽減させるということが動きづくりの目的となります。
以下の3つの動きを作ることで負担が分散され、可動域も拡大されて回復傾向になります。
⑦猫のポーズ
⑧背中の回旋
⑨腰の回旋動作
⑦猫のポーズ
背中の動きをしっかり出していく、背中を反る際に全体を動かす、猫のように丸めるという動作はなかなか日常では行わないので、練習前に必ず実施して動かす、刺激を入れる、動かす意識を持つ、こういった繰り返しによって神経と筋肉が結びつき活性化されていきます。
上の写真の左右をゆっくりと繰り返して背骨一つひとつを動かすイメージで20回程度実施しましょう。
⑧背中の回旋
背中にある胸椎には肋骨が12本付いているので負担がかかりにくい構造をしている反面、腰の腰椎には支える部分がなく捻る動作でも負担がかかりやすくなります。
背中の捻る動きもしっかりと動きを作ることで捻る動作での腰の負担を軽減できます。
・左の写真では内側に捻る動きづくり
・右側の写真では外側に捻る動きづくり
腰だけに負担をかけないように背中の動きづくりはとても大切となり、競技にも影響してパフォーマンスも向上できるポイントなので丁寧に実施して動きを確認して欲しい点です。
10回程度で良いのでゆっくり大きく行いましょう。
中学生はチームのウォーミングアップでもある動きですが、しっかりと大きく回旋動作を行っていない傾向があります。
その雑さと大きく正確に実施する差が大きな差となって怪我や競技に影響していきます。
⑨腰の回旋動作
腰の動きづくりとして両足同時に回旋させることで可動域も改善していきます。
ここで一つポイントですが、上記の写真のように膝を90度程度曲げることで腰椎でも上部の回旋に影響します。
足を浮かせて股関節が90度程度で下部腰椎の回旋に影響します。
膝の位置で動きやすい部分が異なってくるので何往復もしながら足の角度を変えていくとさらに腰全体的に回旋動作が獲得され、分散した動きづくりとなります。
10往復程度を角度を変えて行いましょう。
4.負担を分担させる動きづくり
⑩四肢あげ背筋
いわゆる背筋になりますが、写真左では足先を持ってもらい腰を反らせる背筋ですが、腰椎分離症には悪い背筋となります。
腰を反った際に下部腰椎に負担がかかりやすいやり方となってしまいますのでやらないようにしましょう。
背筋を強化したり動きを作る際には両手・両足を同時に挙げて体全体を弓なりに使うようにすると負担が分担されながらも筋肉が働くので、良い動作習慣を身につけることができます。
負担を分散して下部腰椎に負担がかからないように正しいフォームで動きづくりすることで怪我のリスクや再発リスクを回避できるようになります。
良い動きができても、トレーニングや競技中に負担のかかる動作となってしまえば改善にはならないので、負担がかからない動作習得を身につける必要があるのです。
さらに体幹を強化して背骨への負担を軽減していく必要もありますが、別の記事で紹介していきます。
まとめ
今回腰椎分離症に対する動きづくりとして10個のエクササイズを紹介しました。
【結論】
根本的な動きを見直して改善しなければ腰椎分離症はいくら休んで良くなっても競技復帰すれば悪化してしまう可能性が高いのでまずは動きづくりを戻すことが必須となります。
1.ストレッチにて柔軟性を改善していく
2.背骨の動きをつけて動く範囲を分散させる
3.骨盤の動きを動かせるようにする
4.筋肉の使い方を意識して負担を分担させる動きづくり
上記のような点を改善するように心がけよう!
10個のエクササイズを紹介しましたが、腰椎分離症の予防としても良いエクササイズであり、腰椎分離症になってしまった選手にとっても動きづくりを改善させることが競技復帰に対して最も重要なポイントです。
動きが獲得できなければ休んで痛みが軽減しても根本的なことが改善されていないので再び悪化してしまうことになってしまいます。
1週間で動きがかなり獲得でき、2週間でスムーズさが出て、3週間で習慣化されていきます。
競技に集中してエネルギーを注ぐためには自分自身の体をメンテナンスするためのストレッチや動きづくりを継続することがとても大切となっていきます。
この記事が腰椎分離症で悩んでいる方の参考になれば幸いです。