ミズノ治療院腰椎分離症2

腰椎分離症に対する治療方針を選手の状況で構築する

前回は腰椎分離症に対する発症メカニズムを解説しました。
今回は腰椎分離症に対する治療方針をどのようにして進めていくのか概要を解説します。

私は現在プロバスケチームでアスレティックトレーナーとして24年以上活動してきました。
学生にも関わる機会も多く、U15、U18のカテゴリーも対応してきています。
腰椎分離症の選手を改善させてきています。

今回は腰椎分離症と診断されたあとどのように対応していくか、治療方針を固める必要があります。
腰椎分離症と言っても選手によって痛み方、競技、問題となっている原因は異なってきますのでまずは状況把握することが大切なわけです。

【結論】
腰椎分離症に対する治療方針
・症状を問診、視診、触診、スペシャルテストにて確認して問題となっている原因を追求する
・問題となっている原因には以下の点がある
 1.柔軟性の低下
 2.動きづくり
 3.動作習慣の改善
 4.筋力不足
・原因となっている要因がいくつあるのかによってやるべきことが変わってくる
・発症時期によっては骨癒合可能なタイミングもあるので長期安静になるケースもある

腰椎分離症で困っている本人やご家族が納得、満足した治療の進め方であれば参考にしていただければと思います。

腰椎分離症の症状確認

→プロバスケ選手として活躍する選手も第五腰椎の分離症を確認、高校時に腰痛に悩まされた経験はある その後は問題なし

腰椎分離症という診断になるにはやはり整形外科を受診して検査する必要があります。
中学生はまだ成長段階であるので骨の構造もまだ安定していない状況です。

小学生高学年から中学生にかけて腰痛がだんだんと出てきているケースを見逃さないようにしてほしいです。
腰椎分離症という疲労骨折から分裂した偽関節となってしまうと後遺症は残ってしまいます。

小中学生での問題は動作習慣の獲得ができておらず成長促進とともに柔軟性が低下してしまい骨盤の動きが不十分となり、一部分に大きな負担がかかってしまうことが大きな要因の1つです。

いかに予防して腰椎分離症にならずに競技を継続させていくかは現場のトレーナーの大きなサポートだということです。
しかし、チーム等にトレーナーが不在の現場も多いのが現実で、動作習慣や予防対策の指導者がいないことも原因の一つだと思っています。

私の場合、以下の順で症状を確認していきます。

問診

問診とは話を聞いていくカウンセリングのようなもので、問題となっている原因の特定を絞り込むために必要となります。

・整形外科の受診と検査をしているのか
・いつから痛みが出ているのか
・やっているスポーツは何か
・競技中にどのような体勢で痛みが出るのか
・練習の前半の痛みと後半の痛みで違いはあるのか
・競技の練習頻度や練習内容
・日頃行っているケア方法
・治療院や接骨院で対応してもらっているのか

このような点を選手によっても異なってきますがたくさん質問させていただき現状の把握をしていくことが第一段階です。

視診

次は動作のチェックを行っていきます。
・歩行の仕方
・スクワットの仕方
・各関節の動き方
・競技動作の再現
・問題となる動きの確認

など明らかに問題がある点の把握を目で見て確認していきさらに原因となる点を絞っていきます。

触診

触診(しょくしん)とは実際に触ってみてどこが問題となっているのかを把握する最も繊細な情報を入手することができる検査になります。

・筋肉の硬さ
・関節の動き
・骨盤の動き
・背骨の湾曲

直接触ってみると部分的に硬い部分や動きが悪い部分、全く機能していないような部位など触って動かしていくことで見えてくることがとても多くよりイメージできてきます。

スペシャルテスト

さらに検査をしていきます。

・後屈の確認から捻りを入れていくと痛みが誘発されるのか腰椎分離症の特徴です。
・しかし時期によっては痛みがなくなっているケースもあるので画像検査の必要性もあります。
・柔軟性の確認
・体幹のレベルの確認
・競技の動きを確認して問題となる動きを把握

このような点を確認していきます。

腰椎分離症のケースはさまざまな確認と検査にて詳細を把握することで問題となっている原因が掴めてきます。
原因がわかってくれば解決策を実行していき、段階的にレベルアップさせて競技復帰へ移行していくという流れになります。

問題となる点として

ここで一つ問題となる点があります。
大抵の場合医師からは運動中止してコルセットを着用して安静にすることと指示されて次は2ヶ月後に来院してくださいなどの放置されてしまうケースが多いです。
安静にして治るのであればいいのですが、上記のような多くの確認をしてたくさんの問題となっている原因を解決しなければ休んで良くなったとしても再発してしまうわけです。

私のアプローチとしては本当に初期の段階であれば安静にして炎症を抑えて負担がかからないようにすべきだと思いますが、そのようなタイミングは様子を見ている段階で過ぎ去ってしまっているケースがとても多いように感じています。

運動中止のレベルであっても腰に負担をかけないようにしながら動作改善もできますし、競技の分解練習も別メニューとして十分できることは多いものです。全て運動を中止したらそれまでの競技の感覚と筋力が低下して本当に競技復帰できるまで長期間かかってしまいます。
すると選手はまだ中学生でメンタル崩壊してしまい競技を辞めてしまうことにもつながってしまいます。

もし私のサポートを希望したい方は運動療法に賛同して頂ける方と上記のような確認に時間がかかる点をご理解していただければと思います。

事前にこの辺りを伝えると当たり前ですが医師は休んでコルセット着用しろと言われましたということです。しかし1ヶ月くらい経過するとやはりサポートをお願いしますとなることが圧倒的に多いんです。。。
本当に悩ましい点であります。

問題となっている原因を追求

腰椎分離症となってしまった選手には必ず問題となる原因が存在します。
原因があるから痛みが発生してしまうわけです。
腰椎分離症は繰り返し起こる負担の影響によって骨が疲労骨折してしまい偽関節に発展してしまったわけです。

その原因となっているのが以下の影響が多いです。

柔軟性の低下
動きづくりができていない
悪い動作習慣による負担増
支える筋力不足

1.柔軟性の低下

前回の記事で柔軟性の低下に関しては解説していますが、もう一度簡単に説明いたします。

大腿骨の成長が小学高学年から中学生にかけて最も成長していきます。
その骨の成長に対して筋肉も同じように伸びてくれれば良いのですが、運動をハードに行うことで筋肉は疲労することで硬く縮んでしまう性質があります。

骨の成長に対して筋肉が対応できない状態となって起こるのが、よく知られている膝の成長痛のオスグッドです。

大腿骨の前後内外にある筋肉が骨盤をロックしてしまい動きが悪い状態となってしまうわけです。
すると骨盤の動きが柔軟性の低下で起こることで腰の一部分で動いてしまうことで腰椎の下部に負担が集中してしまい腰椎分離症に発展してしまいます。

2.動きづくり

背骨は頸椎、胸椎、腰椎とあり、頸椎は前弯して、胸椎で後湾し、腰椎で前弯して、仙骨が骨盤の土台としてありバランスをとっています。

スポーツではスクワット動作やパワーポジションは誰でも知っている基本的な動作となっています。

しかしこの際に骨盤の動きが悪い、骨盤の動かし方を指導されていない方が多く、腰椎分離症になってしまう方を診ると明らかに骨盤の動きがそもそもできないというケースが多いのです。

腰椎と骨盤の動き、胸椎と腰椎の動きが不十分となり、全体的に動かすことができず一箇所に依存してしまうことで腰椎分離症になってしまうケースもとても多い症状です。

スポーツのコーチやトレーナーがチームとして小学生や中学生の年代で導入して動きづくりをするだけでも腰椎分離症になってしまう選手の絶対数は減少すると考えます。

私が専門としているのがバスケットボールですが、まだまだ現場で指導不十分と認識しています。

オスグッドに対する大腿四頭筋のストレッチはかなり浸透していますが、腰椎分離症は原因となっているケースが多数あるので単純ではないことが指導者にとっては何をすればいいのか認識不足なのだと思っています。

動きづくりはとても大切でパフォーマンスを向上させる近道であり、予防スキルとしても優秀なわけです。

3.動作習慣

競技には競技独特の動きがあります。
さらに個人でも独特な動きがあります。

この辺りが良い動きであれば良いのですが、悪い癖がついてしまうと筋肉のバランスが悪くなり怪我にもつながってしまいます。

腰椎分離症も悪い動作習慣、一箇所に負担がかかりやすい動作習慣によって生じます。
腰に負担がかかる根本的な原因を探し、改善しなければなりません。

そもそも動きが悪かったり、機能していなかったりという点と、使い過ぎてしまって起こることもあるわけです。

こういった点を踏まえて動作を改善させて負担を軽減させ、さらにパフォーマンスを向上させてあげるのがアスレティックトレーナーとストレングスコーチと競技のコーチの役割の一つだと思っています。

しかし、中学生や小学生ではトレーナー不在であったり、トレーナーとしての経験値が低いとそこまでの対応ができないことが現状なわけです。

私が関わるバスケットボールでは明らかな骨盤の動きの悪さ、腰を反った時の動作、肩の柔軟性、胸椎の動き、スピンの仕方などが影響して改善させていくことで症状も改善していきます。

4.筋力不足

もう一つの要因として筋力不足が影響します。
特に体幹の筋力不十分が影響します。

筋力不足といっても問題は4点あります。

・単純に筋力がないケース
・練習時間に対応する筋持久力が不足している
・瞬間的に筋出力を発揮できないケース
・筋力はあるが競技に活かせていないケース

何が問題となっているのかを確認して、強化していく必要があります。

・中学生は成長期真っ只中です。
・身長が伸びても体重が増加しないケースがとても多いのです。
・中学生だからトレーニングはまだ早いという指導者が多い。
・中学生ならではの強化をしていく必要がある。

この辺りを指導するコーチや現場のアスレティックトレーナーやストレングスコーチは競技特性とともに身体組成の確認もしていく必要があるといことです。

単発的か複合的な原因があるか

上記を参考にしていただければ腰椎分離症になっている原因を絞れてきたと思います。
1つの原因なのか複数原因があるかで取り組む質と量が異なってくるわけです。

1つの原因から腰椎分離症になったケースよりも複数の原因で引き起こされていることがとても多く実感しています。

1つの原因から

単発の原因であれば、その原因に対しての解決策を実行してセルフケアを日々実行していけば早期に改善していきます。
そして練習にも段階的に復帰して問題なければ次のステップへと練習参加条件を増やしていくことができます。

2つ以上の原因から

大抵の場合問題となる原因は複数存在しています。
何から最初に行なっていくかの順番も効率性と改善性に影響するわけです。

この辺りは経験値がとても結果へとつながっていくわけで、解決策を実施させ、選手に実感してもらうと本人が意欲的に行動することでより改善しやすく強化して復帰の目安となっていきます。

安静期間か運動療法実施か

腰椎分離症といっても経過時期によって対応が異なってくるケースがあります。

安静にすべき時期

初期症状でまだ骨が完全に分離していないケースであれば安静にして腰への負担を軽減すれば骨癒合が起こる可能性があるため安静にして対応すべき時期ではあります。

その代わり骨が着く期間は数ヶ月間必要となるので長期運動中止して、腰に負担がかからないメニューにて対応せざるを得ない状況となります。

要するに骨癒合の可能性がある場合はしっかり対応して骨の状態を改善するわけです。

ここで問題なのが、中学生は安静と言っても動いてしまうこと。その期間が長くなってしまいメンタル的にマイナスとなってしまうことが多いものです。

強化すべき時期

分離症と診断されて、分離してしまうと骨癒合の可能性は低くなるので、悪化させないようにしながらも問題の原因に対して積極的なアプローチを実施して動作の改善、筋力強化など対応していくことで負担を軽減させて競技復帰を目指すということになります。

私の対応としては運動療法を中心として動作改善や動きづくり、トレーニングをメインにアプローチしながら競技復帰をするための段階的な向上をさせていくというやり方となります。

将来的に問題となるかというとプロ選手でも腰椎分離症でプレイしている選手はかなり多い現実はあります。
しっかりとセルフケアや治療、トレーニングと努力を継続できれば問題なく対応できるわけですし、実際にプロ選手として活動できています。

動き作りと強化へと

腰椎分離症の改善に必要な要素は動作習慣の改善と体幹を強化することです。

私はバスケットボールを専門として関わってきていますが、腰椎分離症の方だけでなく小中学生は成長期となり身長が縦にどんどん成長すると比例して体重が増加していなく体幹の安定がない状態の選手がほとんどです。

ですから自分自身の体を守るための鎧が身についていない状態なのでさまざまな怪我も発生しやすい中でのスポーツ活動ということです。

強化して体を守れるようにする事、動きを改善して負担を軽減することが本当に重要となります。

体幹の強化

体幹といっても4種類のケースがあります。

1.体幹がそもそも弱いタイプの選手
2.体幹はしっかりしているけど競技中に機能していないタイプの選手
3.協議中も活用しているけど練習終盤になってしまうと働かなくなってしまうタイプの選手
4.体幹はあるけれど瞬間的に発揮できずに負担を軽減できないタイプの選手

1番のタイプは基礎となる体幹のトレーニングを徹底して基礎となる土台を固めることから開始

2番のタイプは競技中でも体幹を機能させるようなエクササイズによって使っている意識を持たせて使える筋肉へ変換していく

3番のタイプは筋持久力や集中力の持続にかけているので何が問題なのかを原因を追究する必要がありますので深掘りしていくことです。
場合によっては貧血からスタミナバテしてしまうタイプの選手もいるので、なぜ練習や試合で終盤に一気に動きが衰えたり、軸がぶれてしまうのか原因を確かめていくことです。

4番の選手はそもそも力があるので、負担がかかりやすいシーンでの力発揮をさせるトレーニングをすれば身につきやすく改善しやすい状態ですので動作痛を理解させ、その動作を再現させたときにどこに意識すると動作痛が軽減するのかを体験させることが近道です。
あとは意識してできるレベルを無意識でもできるように仕上げてあげれば良いわけです。

動作習慣の改善

根本的なランニングフォームからスクワット、さらに競技特性で問題となる動作を見つける。
そもそも競技特性を理解していないとどの動作が悪く、どの動作によって腰椎分離症を引き起こす要因となっているのかが解明できない点があります。

専門家でしかわからない領域でもあるのでなかなか難しいです点ですが、ここが差別化になるわけです。

その次に悪い動作を改善するためのドリルを実施することです。

どのエクササイズを行うことで動作改善につながり負担を軽減していけるのか、期間はかかりますが選手本人が努力を継続することができれば1-2週間で大きな変化を実感できますし、動きの変化も変わっているのがわかり、腰痛の負担が軽減していることが確認できます。

中学生の大きなポイントがあます

痛みが消えて動けるようになると競技を再開してしまうこと、動作改善のドリルを徹底しないことです。
そして再び痛みが増して動作も悪くなっているというケースは多いのです。

動作習得の改善は技術習得と同じ家庭があります。

技術習得の4段階

第1段階・・・知らないから知る
第2段階・・・知っているけどできない
第3段階・・・意識すればできる
第4段階・・・無意識でもできる

1.何が原因で腰椎分離症になっていたか分からなかったことが知ることができた事

2.原因は理解できたけど悪い動作習慣が身についているので教えてもらったエクササイズがまだ正確にできない状態

3.ようやく日々努力を継続して動きが改善してスムーズにできるようになってきた状態だけどまだ改善まではいっていない。
この時に治ったと思って努力を怠って好きな競技ばかり行なってしまうと元の状態に戻ってしまうわけです。

4.練習前のアクティベーションとしてやることが習慣化され努力しているという感覚がなくなって実施することが当たり前となる事
この段階にくると再発せずに良い状態をキープでき、悪くなっても治療やセルフケアとエクササイズで改善できるレベルになったということ。

好きなことだけを行なっていては怪我をしてしまうという事を腰椎分離症になって初めて競技から離れることで理解できるかと思います。
この点も人間力として成長した点としては大きな財産となりますが、やはり長期競技離脱は避けなければならないので、いかに努力を継続できるかということも大切となります。

努力を継続できる選手が天才肌やセンスよりも上回るメンタルを備えて勝者となることはスポーツの醍醐味だと思っています。

まとめ

今回腰椎分離症の治療理念として解説してきました。

ではどうやって悪い動作習慣を見抜くのか、どのような体幹の強化が必要なのか、このあたりは個人差もありますが、また別に投稿記事として記していきたいと思います。

【まとめ】
腰椎分離症に対する治療方針
・症状を問診、視診、触診、スペシャルテストにて確認して問題となっている原因を追求する
・問題となっている原因には以下の点がある
 1.柔軟性の低下
 2.動きづくり
 3.動作習慣の改善
 4.筋力不足
・原因となっている要因がいくつあるのかによってやるべきことが変わってくる
・発症時期によっては骨癒合可能なタイミングもあるので長期安静になるケースもある

今回の記事が参考になれば幸いです。

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