小学生のバスケットボール選手は特に4年生以上になると成長度合いも高くなり運動量も多くなります。
そこで起こりやすいのが成長痛のオスグッドです。
成長痛なので基本的にはバスケットボールはやりながら対応していく事がポイントとなりますが、実際には激痛となることもあります。
ではどのように対応すれば良いのか?
今回はオスグッドの対応の仕方を熟知して、痛みがありながらも上手に骨が安定するまでの長い期間を良い形で競技活動をしていくかについて解説していきます。
私は現在プロバスケチームでアスレティックトレーナーとして活動して24年間となります。
毎日プロ選手の体のサポートをしています。
小学生から大人まで各カテゴリーを対応し、現在もU15やU18にも対応しています。
小学生のオスグッドと言ってもやはり個人差があり、痛みの強さや時期、問題となっている原因も異なってきます。
個人的な要素となる動作習慣や体の使い方によっても影響します。
ただの成長痛と判断せずに問題となっている原因を突き止めて対応することで痛みのレベルも変わってきます。
【結論】
・オスグッドはしっかりとセルフケアをすれば練習をやりながら対応できる
・自分自身の毎日のやるべきことを継続できるかがとても重要である
・保護者も理解してしっかりとサポートしなければならない
・ストレッチやアイシング、筋膜リリースのセルフケアで回復しない際は治療を受ける必要がある
・痛みが強く普通に歩けないレベルでは炎症が強いため休むことも必要となる
目次
成長痛とは
人間は年代によって成長促進が進む時期があります。
骨が急激に伸びやすい時期があり、その際に筋肉が同じように伸びにくく、運動などによる負担によって骨に牽引力がかかり痛みとして現れます。
小学生低学年では足のサイズが大きくなり踵の骨端症、オスグッド、外脛骨、有痛性分裂膝蓋骨、腰椎分離症などにバスケットボールの選手は影響してしまいます。
オスグッドとは
オスグッドとは正式にはオスグッド・シュラッター病といいアメリカの医師オスグッド氏、スイスの医師シュラッター氏の発表よりこのような名称となっています。
走ったり、跳んだりといった競技に多くバスケットボールやバレーボール、サッカーなどの球技でも多い症状です。
男女比としては男子の方が比率が高いと言われています。
膝伸展機構

膝は曲げたり伸ばしたりする事ができる関節です。
オスグッドは特に膝を伸ばす際に活動する筋肉の影響があり、膝伸展機構(ひざしんてんきこう)といいます。
膝伸展機構
・大腿四頭筋(だいたいしとうきん)・・・ももの前面部にある筋肉で4つの筋肉からなる
・膝蓋骨(しつがいこつ)・・・お皿のことで大腿四頭筋がお皿についていく
・膝蓋靱帯(しつがいじんたい)・・・膝蓋腱(しつがいけん)ともいいお皿の下に靱帯となって脛骨(けいこつ)の付く
大腿四頭筋
・中間広筋(ちゅうかんこうきん)・・・中央の奥にある
・内側広筋(ないそくこうきん)・・・内側にある
・外側広筋(がいそくこうきん)・・・外側にある
・大腿直筋(だいたいちょっきん)・・・最も長く中央表面にある
なぜ痛くなるのか
・小学生の高学年になるとバスケの練習も激しくなること
・大腿骨の成長が最も伸びやすく筋肉の成長が遅れるため硬くなりやすい時期
・筋肉の柔軟性が低下して骨の成長によって柔らかい骨が引っ張られる
・運動や牽引力によって患部の炎症が強くなって痛みが出る
・体の使い方が大腿部前面にかかりやすい動作習慣によって負担増となっている
上記のような問題が原因となっていることが多いです。
対応策として

オスグッドの対応策としてセルフケアがとても大切となってきます。
対応策としては
・セルフケアを徹底して継続する
・治療して筋肉の柔軟性をより良くしておく
・どんな際に痛みが強くなるのか理解すること
・テーピングやサポーターで負担を軽減する
オスグッドに対する痛みのレベルを上図で表記しました。
いかに痛みのレベル良い状態で維持してバスケットボールと向き合うかです。
バスケットボールを行うことで起こる現象として
・疲労することで疲れてしまいセルフケアを行わずに寝てしまう
・バスケによってオスグッドの炎症が起こって痛みが増加する
・走る、跳ぶの繰り返しで筋肉が疲労して硬く縮まってしまう
・骨は成長したいのに筋肉が硬く縮まっているから身長が伸びたくても成長できない
・寝ることで筋肉が固まって朝起きると痛みが強い
上記のようにバスケットボールをすると悪い方向へ行ってしまいレベルが上がってしまいます。
しかし、バスケをしないと上達しません。
そのためにはセルフケアをしっかりと毎日のように実施して筋肉の状態を良くして患部の骨への負担を軽減させて炎症を抑えることがとっても大切なわけです。
ではここからセルフケアを紹介します
ストレッチ

筋肉の柔軟性を改善するためにはストレッチが最も大切で自分自身で行えて、いつもの違いを把握できます
・筋肉がいつもよりも硬いかを確認する
・元の状態に戻してさらに柔らかくしていく
・大腿直筋が表面にあり最も長いのでまずはしっかりと伸ばす
・その後に全体的に伸ばしていく
膝の動きだけでなく、股関節の動きも良くしておくことも重要です。
成長期は大腿骨が伸びていくので、前面だけでなく、全体的にストレッチをしましょう
・ももの前面
・ももの後面
・ももの内側
・ももの外側
・股関節の前面
この辺りのストレッチをオスグッドとしてはしっかりと行っていきましょう。
あとは個人的に問題となっている部分をしっかりとストレッチしていくこと。
毎日継続する事が大切なので自分自身で継続できるように内容を構成するといいです。
ストレッチの3つのタイミング
・朝起きた時・・・固まった筋肉を緩める
・練習前・・・筋肉の状態をよくする
・練習後または入浴後・・・使った筋肉を元に戻す
この3つのタイミングで短時間でもいいのでストレッチを行う習慣をつけて痛みのレベルを低くしておく事です。
アイシング

アイシングは患部の炎症が強い時に実施することで炎症を鎮めてくれます。
炎症症状が強くなることで痛みのレベルが上がってしまいますので、オスグッドの選手は実施すべき対応となります。
アイシングの方法として2つります
・アイスバッグで行う
・ビニール袋で行う
小学生の場合はアイスバッグの方が便利です。
氷を板状にして空気を抜くことは意外と技術が必要です。
ビニール袋は破れやすく、車のシートなど濡れてしまうと保護者の方もイライラするかと思います。

アイシングは氷が溶けると空気が発生するのでアイスバッグの方が写真のようにバンテージで固定してもキャップから空気が抜けるので密着しやすい点からもアイスバッグの方が小中学生は利便性があります。
炎症症状が強いとアイシングをして全体的に冷えると写真右のように赤くなっている部分がアイシングをして冷やされた部分です。
真ん中の白い部分は炎症が強く冷えていない証拠を写真でも確認できるかと思います。
写真は腰部で別部分ではありますが、膝も同様の反応が出ます。
実際にアイシング後に触れてみると周りは冷たいけど患部は温かいことが実感できるます。
やり方として
20分間アイシングしたら40分は間隔を空ける、炎症が強い場合はもう一度アイシングする
アイシングの注意点
自宅の冷蔵庫の氷は0度以下で霜がついています。この状態でアイシングすると凍傷になってしまう場合があります。
自宅の冷凍庫の氷を使用する際は少しだけ水を入れ氷の表面が溶けていけば0度以上となり凍傷にはなりません。
業務用製氷機の氷は0度以上の設定なので問題なく使用できます。
よくある保冷剤は0度以下で長時間持続してしまうのでアイシングには使用しないようにしましょう。
凍傷のリスクがとても高くなってしまいます。
筋膜リリース

筋膜リリースとしてローラーにゴロゴロしている風景をよくみるかと思います。
プロチームでも選手のセルフケアとして練習や試合を行う前に実施して筋肉の状態を良くしてからプレイしています。
プロ選手は各自やる種目が異なりますが、最も多いのがこの筋膜リリースです。
バスケットボールはももの前面の筋肉はとてもよく使う部位なので当たり前のように自分自身で対応しています。
コートでも行いますし、自宅でも行っています。
いかに筋肉の動きを良くして筋肉がスムーズに伸び縮みする事ができるかで瞬発力や持久力にも影響しバスケットボールのパフォーマンスに直結していきます。
こういった努力の積み重ねが試合で結果に結びつくわけです。
筋膜リリースは筋肉に対して縦方向だけでなく、横方向にも行う事で相乗効果によって緩みやすくなるので実施してみてください。
プロのトレーナーのトリートメントも筋肉に対して縦方向と横方向にアプローチしてマッサージ等でも緩めていくので同じ原理なんです。
股関節の動き改善
大腿骨の成長が著しくてオスグッドに影響しています。
大腿骨についている筋肉は膝の関節の動きだけでなく、股関節の動きにも影響しています。
筋肉が縮んだままでは股関節の動きも悪くなってしまい骨盤の動きがロックされてしまうわけです。
オスグッドの次に来る成長痛のひとつが腰椎分離症です。
股関節の動きが悪く腰の一箇所に負担がかかってしまうことで疲労骨折となり分離症となってしまいます。
この辺りが膝と股関節、腰と連動していることが怪我からもわかってきます。
股関節は丸い球型の関節となり肩と同じような構造であらゆる方向に動く関節となっています。
しかし、股関節の動きが悪いと連動して膝にも影響してオスグッドの痛みを強めてしまう傾向があります。
最も影響しているのが大腿四頭筋の中の大腿直筋になります。
大腿直筋は膝から股関節を通り骨盤についています。
・膝を伸ばす
・股関節を曲げる
という働きがあるので大腿直筋が硬くなることで膝と股関節に影響するわけです。
股関節の動きもしっかりと出すことでバスケットボールではディフェンス力とオフェンス力の両方に大きな影響する部分です。
テーピング

テーピングを巻けばオスグッドが良くなるわけではなく、患部への負担を軽減させる対処療法の一つです。
骨への牽引力を抑える目的としてお皿の下にある膝蓋靱帯に圧迫をかけることで患部への負担を軽減させる役割です。
上記の写真では最も簡単でコスパ抜群のテーピング方法となります。
使用するテーピング
・アンダーラップ
アンダーラップを7周程度巻いて、上からクルクル、下からクルクルと丸めて細くしたら裏返しにして膝蓋靱帯の良いポイントにあてがうものです。
アンダーラップなので粘着面もなく肌荒れも防げて使い捨てでも費用も最小限で済みます。
このテーピングが有効であれば下写真のようなサポーターを購入しても良いでしょう。
サポーター

サポーターにもいろいろありますが、単純にオスグッドの痛みを抑えるだけであればストラップ型で十分対応できます。
膝蓋靱帯を圧迫することで脛骨への牽引ストレスを減らして患部への炎症を抑える役割となります。
膝の前側にパッドがついているので合わせて巻くだけなので最も簡単なタイプのサポーターですが結構有効です。
練習前にやるべきこと
対応方法もたくさん紹介してきました。
この中で練習前にやるべきことを紹介します。
・ストレッチ
・筋膜リリース
・股関節の動き
・テーピングまたはサポーター
この辺りをしっかり行っていきましょう。
なぜ練習前にやるべきか?
最も良い状態でバスケットボールを行うためです
・自分の状態を把握する
・動きが良くなる
・力が入りやすくなる
・反応速度が速くなる
・長時間耐えられるようになる
・痛みが気になりにくくなることで集中力も持続する
・上記からバスケが上手くなる確率が高くなる
痛みがあると集中できなくなるものです。
これはプロ選手でも同じ現象になります。
いかにプレイに集中してできるか、ミスをなくしてプレイできるか、シュートの確率を上げられるか
こういったことがバスケットボールではとても重要となってきます。
そのためには最善を尽くしてより良い状態でプレイするための準備を行うこと、習慣づけることが上達につながっているわけです。
練習後にやるべきこと
練習や試合後にやるべき事があります。
好きなバスケをやったから満足!で終わらせてしまうと翌日痛みが強くなって練習ができなくなってしまうことにも影響します。
練習でも使ったら道具や荷物を整理してモップをかけてコートに一礼しているかと思います。
自分の体も同じで使ったら元に戻して整理していく必要があるわけです。
オスグッドに対した練習後にやるべきこと
・ストレッチ・・・使った筋肉を元に戻す
・アイシング・・・炎症を抑えて痛みのレベルを下げる
順番ばどちらでも良いのでとにかく自分の体をメンテナンスして元の状態に戻してあげることです。
成長は寝ている時に起こります。
筋肉が使って硬く縮まった状態では、成長したい骨にとって、動きが悪くて成長できない状態です。
練習後に縮んだ状態ではバスケに必要な身長が伸びづらいままとなり勿体無いわけです。
ストレッチをして良い状態にすることでゆとりができ成長しやすくになるわけです。
注意すべき点

オスグッドの対応の際に注意すべき事がいくつかありますのでこちらも参考にしてください。
練習を中止するべき時
対応策の痛みのレベル7や6の状態である場合は、練習すると悪化してしまいます。
試合などの重要な時はやむをえないケースもあるかと思いますが練習を中止して回復させることが大切です。
大会や試合によっても重要度合いは異なってきます。
この辺りは現場での判断となりますが、骨もケースによって剥離してしまいただの骨の隆起だけでは済まないケースもあります。
実際にオスグッドの後遺症で痛みが常にある状態で行っていた高校生やプロ選手もいます。
小学生の将来を考えた際に無理をさせるならその分リカバリーを与える期間も必要となります。
練習の強度をコントロールしたりコーチにも対応可能なケースは多くあります。
痛みのレベルを下げて最低でもL5以下でできるようにセルフケアや治療を行うようにすべきです。
練習はやりながら対応する
オスグッドの成長痛は長期間持続するものなので基本的にはプレイしながら対応することで大丈夫です。
ただし、それには条件があります。
・痛みのレベルをL5以下にしておくこと
・セルフケアの徹底をして習慣づけること
・やるべきことをやらずして向上していくものではない
・練習頻度や強度も考慮する
上記の対応ができない環境や管理下では悪化してしまうリスクが高くなってしまいます。
医療機関受診すべき時
成長痛だからといって軽くみず定期的なレントゲン等の検査で骨の状態を確認することです。
問題なのは骨の隆起から剥離による後遺症のケースは痛みが成長期の安定期以降も継続して痛みが残ってしまいます。
L5の際やL6の時点で画像検査で骨の進行状況を確認しておくと早期対応ができます。
めんどくさいことはやらない年代
小学生はまだまだ自我が未完成であり、経験値としても不足な年代です。
そのため好きなことには一生懸命やりますが、セルフケアは面倒でやらなくなりがちです。
この記事でもなぜやる必要があるか丁寧に解説していますが、子供です。すぐに忘れてしまいます。
そして事が大きくなって後悔してしまいます。
そうならないように選手に任せっきりでなく、保護者やコーチの協力が必要となります。
それでもやらない場合本人の責任とせずに、何度も気づきを与えて対応してください。
治療院の専門家の先生の魔法がかけられる時も実際にあります。
ちょっとしたきっかけがマインドセットできたりします。
まとめ
今回、成長期のバスケ選手が知っておくべきオスグッド病の症状と対応というテーマで解説しました。
オスグッドは成長期にバスケ選手は起こりやすい症状です。
しかし通過点となり、その後中学生になると腰椎分離症につながってしまいます。
腰椎分離症は長期間バスケットボールができなくなってしまうケースもあるので大きな怪我となってしまいます。
そうならないためにもストレッチなどのセルフケアの習慣をつけて股関節の動きをよくする事も大切となります。
オスグッドは選手にとってセルフケアの習慣づけとしてとても良い試練の場になります。
コーチ、保護者、選手のコミュニケーションも大切となりますので今回の記事を参考にしてください。
【まとめ】
・オスグッドはしっかりとセルフケアをすれば練習をやりながら対応できる
・自分自身の毎日のやるべきことを継続できるかがとても重要である
・保護者も理解してしっかりとサポートしなければならない
・ストレッチやアイシング、筋膜リリースのセルフケアで回復しない際は治療を受ける必要がある
・痛みが強く普通に歩けないレベルでは炎症が強いため休むことも必要となる
オスグッドで悩む選手がこの記事を読んでうまく対応できれば嬉しい限りです。
腰椎分離症はこちらを参考に↓↓↓