バスケ選手の怪我で最も多いのが足関節捻挫です。
足関節捻挫といっても症状はさまざまで靱帯もいくつかの種類があること、骨が影響しているケース、筋肉や組織のダメージなど問題となることも異なります。
軽傷から重症までレベルも異なってきますし、複合的な損傷をしてしまうこともあります。
バスケ選手が足関節捻挫をした際の問題となる点について解説していきます。
私は現在プロバスケチームでアスレティックトレーナーとして24年間活動しています。
日本代表のトレーナーとして、モンゴルのプロチームでの実績もありバスケットボールのプロ選手から小学生まで全てのカテゴリーで活動してきた実績もあります。
足関節捻挫はしっかりとリハビリと筋力強化していかないと繰り返し捻挫してしまい、不安定な状態となってしまいます。
足元が不安定であればパフォーマンスにも影響し、バランス感覚や切り返しの瞬発力にも影響します。
バスケットボールの競技特性として最終的にスピードをコントロールしてバランスを保てないとどんなシュートも確率が落ちてしまいます。
ブレーキ動作に足関節の安定感は必須となるのでここでは基礎的な知識を得ていただければと思います。
【結論】
・バスケは足関節内反捻挫がとても多く前距腓靱帯を損傷しやすい
・捻挫をした際は画像検査をして誤診の内容に対応すべきです
・足関節捻挫といっても骨、筋肉、靱帯、軟部組織の影響で痛みの部位も異なってくる
・関節可動域が不十分だと体重が片足に乗ってしまい悪化してしまうケースもあるのでリハビリは必須
・捻挫をすることで筋力低下が顕著となるのでどの動きで痛みが出たり、脱力するか理解する
足関節の動き
足関節はいろんな方向へ動くようになっています。
・底屈(ていくつ)/背屈(はいくつ)という動きは歩く時にも最も使う動きで縦方向に動くことを言います。
・内転/外転は内側や外側に向ける動きとなります。
・内反(ないはん)/外反(がいはん)は傾ける動きとなります。
・内返し/外返しは複合的に動く動き方を指して、バスケットボールでは内返しの捻挫がとても多いです。
足関節の構造
足関節には足の底にかかとがあり踵骨(しょうこつ)が土台となって、その上に距骨(きょこつ)があり足関節の動きを作っています。
距骨の上に脛骨(けいこつ)があり、外側のくるぶしは腓骨(ひこつ)によって支えられています。
外側には安定させる靱帯があり
・前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい)
・踵腓靱帯(しょうひじんたい)
・後距腓靱帯(こうきょひじんたい)
・脛腓靱帯(けいひじんたい)
バスケットボールで多い内返し捻挫や内反捻挫の場合に最も損傷しやすいのが前距腓靱帯となります。
さらに重症な状態で踵腓靱帯まで損傷するケースもあります。
特殊な捻挫の仕方として足関節が背屈した状態で捻挫してしまうこともあります。
着地の際に相手選手の足に乗ってしまうようなケースですが背屈時では脛骨と腓骨をつなぐ外くるぶしの前側にある脛腓靱帯が損傷してしまいます。
痛みの原因
痛みにも靱帯による痛み、組織の損傷による痛み、筋肉のダメージによる痛み、骨自体の痛みなどさまざまな問題があります。
足関節捻挫をした際は応急処置をして腫れを出さないようにすることで競技復帰の時期が大きく変わってきますので対応してほしい処置となります。
詳細はこちらを参考に↓↓↓
>>応急処置の仕方で復帰が早くなる!!足関節捻挫後の対応方法
足関節捻挫をした場合、よっぽどの軽傷でない限り一度医療機関で検査することを勧めます。
痛みは個人差があり、痛みに強い場合では骨にダーメーじがあっても大丈夫という選手もいれば、痛みに弱い場合では軽傷でも大袈裟と言うほど痛がる選手もいます。
画像で検査して骨に問題がないか確認をする事は判断の誤診を防ぐ対応策として、その後のアプローチ方法やリハビリ、競技復帰にも影響します。
骨の問題
骨に問題がある場合は腓骨が骨折してしまうというケースもあります。また剥離骨折となっているケース、骨挫傷(こつざしょう)と言う骨の打撲になっているケースもあるのでレントゲンやCTで確認すると診断できます。
整形外科を受診して医師の指示に従って検査となります。
繰り返し捻挫をしていると靱帯が緩くなることで骨挫傷になるケースが多く、内側に痛みが出ることも多くあります。
靭帯の問題
足関節の内反捻挫では痛みは外くるぶしの周囲にでやすく特に外くるぶしの下前方にある前距腓靱帯が最も損傷します。
特に初めて捻挫をする小学生や中学生では腫れて痛みが強く症状が出ます。
何度も繰り返し捻挫してしまうバスケットボールの選手では靱帯が緩んでしまい、捻挫をしても外側にはあまり痛みが出ずに、内側の前方に痛みが出てしまうケースもあります。
靱帯が緩んでいることから伸ばされるものがなく、内側で骨同士がぶつかっての骨挫傷による影響もあります。
捻挫の程度がひどく内返し捻挫をすると外くるぶしの真下にある踵腓靱帯にも損傷し大きく腫れ上がってしまうケースがあります。
踵腓靱帯が損傷すると復帰も長引いてしまいがちです。
外くるぶしの前にある脛腓靱帯が損傷すると痛みもやや上の部分となり、受傷機転でも足関節を背屈している状態での損傷が多く押した際の圧痛もあります。
脛腓靱帯が損傷すると通常の歩行にて足を反らせる動きでも負担がかかるので治りが悪く痛みが長引いてしまいます。
ここの損傷では通常の歩行でもテーピングをして負担を軽減させるのが回復の近道でもあります。
筋肉の問題
足関節を動かす筋肉はたくさんありますが、ここでは特に重要となる2つの筋肉を紹介します。
腓骨筋(ひこつきん)
外側のくるぶしの後を通る筋肉で足関節の外側を安定させる筋肉でもあります。
長腓骨筋と短腓骨筋があります。
この筋肉が機能不全になっていると捻挫を繰り返しやすく外側の安定感が得られず、強い切り返し動作にも影響します。
足関節捻挫の際に外くるぶしの後方の痛みがある場合は、腓骨筋のダメージが出ているケースがあり、筋肉の柔軟性が低下して背屈の制限が出やすくなります。
後脛骨筋(こうけいこつきん)
内くるぶしの後を通る筋肉で足関節の内側の安定をさせる筋肉が後脛骨筋です。
内くるぶしの後方に痛みがある場合、後脛骨筋のダメージが出ているケースがあり、筋肉の柔軟性が低下して背屈の制限が出やすいです。
腓骨筋と後脛骨筋は足関節の安定に大きな影響をするので機能改善しないと背屈の制限が取れずに常に痛みが残ってしまうケースもあります。
関節可動域チェック
足関節の可動域が悪くなるとバスケットボールの競技中にちょっとしたステップを踏んでも痛みが出てしまうケースもあるので、柔軟性の確保はリハビリとしても重要なポイントとなります。
背屈制限
足関節を背屈させると上の写真では左足の方がよく曲がり、右足に背屈制限があることが確認できるかと思います。
このように足関節でも可動域に左右差があるとジャンプの踏み込み時に曲がりが悪い方の右足に全体重がかかってしまい負担が増してしまい、痛みが出たり、なかなか良くならないということにつながります。
要するに可動域が確保されないとまず片足に全体重が乗りやすく、半分づつに分担できるものができずに痛みがどんどん増して悪化してしまうというケースにも繋がってしまいます。
底屈制限
足を下げる動きを底屈と言いますが、上の写真では右足が底屈に制限がある状態です。
底屈制限があるとジャンプした直後に足首が伸び切るため、痛みが出てしまい思い切ってジャンプできなくなってしまいます。
足関節捻挫をすると可動域が悪くなり、ジャンプの際に痛みが出やすいのが可動域制限で起こる痛みとなります。
バスケットボールの際にレイアップシュートは片足でジャンプして着地するので痛みが出やすい動作になります。
可動域をチェックして制限がある場合は改善させるリハビリが必須となります。
可動域が改善しないと再び悪化してしまうこともあるのでなかなか改善できずに痛みを引きずってしまいバスケのパフォーマンスが悪い状態のままとなってしまい中途半端なレベルで実施することで悪循環してしまうこともあります。
筋力チェック
足関節の動きで筋力が弱くなってしまうことが捻挫をした後は顕著に出ます。特に左右差で大きな差となってしまうので各方向にて筋力のチェックを徒手抵抗で実施すると弱い方向が確認できるかと思います。
筋肉には働き方が3つあります。筋肉の収縮形態と言います。
・等尺性筋収縮・・・関節を固定した状態で力発揮する
・求心性筋収縮・・・筋肉を縮めながら力発揮する
・遠心性筋収縮・・・筋肉が伸ばされながら耐える力の発揮
捻挫をすることで筋力が低下してしまいます。その際にどの筋肉が弱くなったのかを理解することで足関節の強化を行う意識がつきます。
私のアプローチ方法
練習や試合の前にプロ選手は予防でテーピングを巻きます。
しかしただテーピングを巻くだけではなく、筋肉に刺激を入れて、力発揮に対応できるように実践しています。
毎日テーピングを巻く前に徒手抵抗でトレーニング要素を入れると足関節に刺激が入り、安定感も出ます。
毎日行うことで習慣化されてかなり筋力強化も実践できています。
その結果昨シーズンでは捻挫で離脱した選手を防ぐことができリーグからも評価されました。
ちょっとしたことですが、毎日実践していくことで強い足を作り、刺激を入れて、アライメントも調整して動きも良くすることで良いパフォーマンスに影響していることを実感しています。
まとめ
今回はバスケ選手の足関節捻挫による痛みの原因チェック方法として解説しました。
【まとめ】
・バスケは足関節内反捻挫がとても多く前距腓靱帯を損傷しやすい
・捻挫をした際は画像検査をして誤診の内容に対応すべきです
・足関節捻挫といっても骨、筋肉、靱帯、軟部組織の影響で痛みの部位も異なってくる
・関節可動域が不十分だと体重が片足に乗ってしまい悪化してしまうケースもあるのでリハビリは必須
・捻挫をすることで筋力低下が顕著となるのでどの動きで痛みが出たり、脱力するか理解する
医学的なことは難しい点がありますが、足関節はバスケットボールのパフォーマンスに影響する部位であり、最も怪我が起こりやすい点もあります。他人事ではなく簡単でも医学知識として理解しておくとリハビリやセルフケア、治療、競技復帰の際のヒントとなって良い方向に向かうはずです。
なぜここが痛いのかを理解することで、問題となっている原因が確認できたということです。
原因がわかれば原因に対する解決策を実行して改善していくことです。
今回は問題となっている原因を確認できる構成の内容でした。
また別の機会には足関節に関する具体的なアプローチ方法も紹介していきます。
この記事がバスケ選手のためになれば幸いです。
