バスケットボールでモモカン(モモカツ)と言われる大腿部打撲は頻繁に起こる怪我の一つです。
学生ではドライブの際に打撲を起こすケースが多く、プロレベルになるとピック&ロールにて発生する頻度が高いです。
打撲だからと軽視されがちですが、最も対応が難しいケースの一つでもあります。
私は現在プロバスケチームでアスレティックトレーナーとして24年間活動しています。
小学生から大人まで全ての各カテゴリーを経験してきました。
打撲にも症状のレベルがあり、軽症では問題なくプレイしても大丈夫ですが、重症では対応の仕方によって長引いてしまう点や最悪手術となってしまうケースもあるので正しい知識が必要となってきます。
【結論】
・大腿部の打撲をモモカンと言います。海外ではチャーリーホースと言います。
・大腿部打撲は症状のレベルがあり軽視されやすいですがその分対応が難しい点があります。
・応急処置の仕方を間違えると復帰期間が大幅に長期化してしまうので最初の1日が大切です。
・最低でも90度以上膝が曲がらないとプレイすれば悪化してしまいます。
・内出血が骨化する骨化性筋炎となれば手術が必要となってしまいます。
今回は大腿部打撲のモモカンに関して解説していきます。
大腿部打撲(ももかん)の症状とは?

モモカンは東日本でよく使われる呼び名で西日本ではモモカツということも多いと聞きます。
バスケットボール独特の言い方で『カツった』などいうこともありますね、語源は不明です。
海外ではチャーリーホースと言われて世界共通言語にもなっています。
モモカンはなぜ痛いのですか?
筋肉の打撲は筋挫傷(きんざしょう)と言いますが、圧力によって圧縮されてしまう症状となります。
筋肉は緩んでいる際は柔らかく、力を入れると硬く縮む性質があります。
硬く縮んだ状態で強打することで筋肉が押し潰されることで内出血してしまいます。
筋肉のダメージでの痛みと出血が広がって組織の壊死による痛み、さらに腫れによっての圧迫痛の生じて痛みが出ます。
また関節を動かすことで押し潰された筋肉が動くことで痛みがさらに強く出てしまい、二時的損傷も影響します。
打撲にも症状のレベルがある
打撲の軽症では痛みがあるものの、関節の可動域(膝の曲がり具合)がしっかりと確保できているのであれば回復しやすい状態です。
打撲の重症では歩行のできない状態となり、内出血と腫れもひどく、膝の曲がりが行えなくなってしまう状態となり、骨折よりも回復に時間がかかってしまうケースもあり1ヶ月以上復帰にかかってしまうケースもよく起こってしまいます。
打撲のモモカンで入院することもある
バスケットボールではプロでの場合ピック&ロールによるスクリーン時にビッグマンがムービングすることでガードなどのスモールマンが打撲をするケースがとても多くなります。
ビッグマンの膝の高さがスモールの大腿部にヒットしやすいので強い打撲も起こりやすい原因となっています。
プロ選手で打撲によって症状がひどく入院した選手もいるほどです。
打撲は初期の対応がとても大切となり、対応の仕方や無理を続けたり刺激が大きく加わることで内出血した血液の成分の血小板とカルシウムによって筋肉中に骨が形成されてしまい、痛みがずっとなくならずに検査することで骨化性筋炎と発見されることもあります。
筋肉の中に骨ができてしまい、その部分で痛みが持続して生じるので取り除く手術が必要となってしまいます。
実際に現在プロ選手でも骨化性筋炎で手術した選手がいますので、身近な症例でもあります。
打撲は受傷後にアドレナリンも出ているため比較的プレイできてしまうケースも多いのでプレイ継続してしまいますが、翌日に悪化してしまうケースも多く判断が他の怪我よりも難しい点があります。
モモカンの応急処置

ももかんは応急処置の仕方や1日の対応によってその後大きな違いが出やすい怪我です。
その対応が間違ってしまうと競技復帰にも影響してしまう現実もありますので怪我をする前に応急処置の方法を確認しておきましょう。
モモカンは応急処置がとても大切
軽症でプレイ可能なケース
プレイできるか様子を見て大丈夫であれば、大腿部のストレッチをして対応しましょう。
受賞直後はダメージがあるので一旦休息をとり人落ち着きして動きを確認して競技復帰しましょう。
その際にテーピングで圧迫をかけておくことはダメージ軽減として有効です。
試合後にRICE処置をするようにしましょう。
軽重症で無理してプレイできるケース
通常では中止すべき症状でも大切な試合中であればプレイしなければならないケースがあります。
本来であれば一旦アイシングして炎症を鎮めたいのですが、一度冷やしてしまうと筋肉が固まってしまうので冷やさないようにします。
冷やすことで関節可動域が悪くなり、膝が曲がらなくなってしまい、余計動けなくなってしまうためです。
応急処置としては試合後に実施します。
RICE処置として安静、冷却、圧迫、挙上を実施しつつ、膝の屈曲をして行います。
膝を伸ばした状態で応急処置を行うと、膝が曲がらなくなってしまい、通常の歩行や階段昇降の日常動作にも影響しやすいためです。
重症でプレイできないケース
プレイは無理と判断した場合はすぐに応急処置をすることで幹部の損傷を抑えることができます。
RICE処置とは
Rest (安静) 二次損傷を防ぐ
Ice (冷却) 炎症を抑える
Compresion (圧迫) 出血や腫れを抑える
Elevation (挙上) 静脈の流れを戻す
さらに膝を曲げた状態で行うことが大切で、関節可動域の確保がしやすくなります。
応急処置のRICE処置に関しての詳細はこちらを参考に↓↓↓
>>応急処置の仕方で復帰が早くなる!!足関節捻挫後の対応方法
モモカンは内出血すると時間経過で膝に落ちてくる

打撲の受傷をした際に血管も損傷し内出血が起こっても血管は修復します。
すると外にでてしまった血液は戻る場所がなく、細胞に浸透していきます。
さらに皮膚表面まで浸食して内出血の範囲が広がっていきます。
重力の関係で大腿部から膝の方へあざが広がっていきます。
あざの見た目はなかなか引かないので仕方がないですが、そこまで気にする必要はありません。
痛みや動きにどれだけ影響が出るのかが問題となってきます。
上写真はプロ選手が実際に打撲を受傷した際に応急処置をしたことで患部では内出血を防ぐことができましたが、その分出血が広範囲に広がった写真です。
痛みとしては🔴の患部で、あざの部分は大きな問題はない状態です。
受傷した日の行動によって悪化もする
受傷して応急処置はしたものの、その後の対応によって状況が悪化してしまうこともあるのでっかりと対応しなければなりません。
応急処置だけでは内出血が完全に止まらないケースがあります。
歩行して帰宅しなければならないことで再出血してしまうこともありますので、幹部の圧迫とバンテージ固定も大切となります。
その日は入浴は避け、シャワー程度で済ませ、自発痛があれば再び帰宅後もRICE処置を実施すると良いでしょう。
寝ている間も圧迫をすることで悪化を防ぐことができます。
モモカンの受傷日にやっては行けないこと

怪我をした際にやっては行けないことがあります。
この点を把握しているのとしていないのでは競技復帰に大きな差となってしまいます。
モモカンを受傷した日は入浴は避ける
怪我をして帰宅した際に入浴してしまうことで血流が良くなって出血がより多くなってしまうことがあります。
さらに炎症も強くなるために悪化してしまうことがあるので入浴やアルコール飲料、マッサージなどはしないようにしましょう。
シャワー程度で簡単に済ませて夜寝る際も圧迫をしておくことと足を高くすること、膝を曲げることはしておきましょう。
・入浴は避け、シャワー程度にする
・血行を良くする事は避ける
・寝る際も圧迫して足を高くする
・膝を曲げておくことで可動域が確保しやすくなる
この辺りを意識しましょう。
モモカンの受傷後はマッサージや強い刺激はしないこと
痛いと患部を叩いたり、マッサージしたりしがちですが、刺激を繰り返さないようにしましょう。
打撲して内出血すると血液の成分には血小板が凝血作用があり、血液の成分にはカルシウムも含まれます。
刺激を繰り返すことで筋肉中に骨が形成されてしまうことも実際にあります。
骨化性筋炎を発症してしまうことにつながる行為の一つです。
強い刺激とは
・揉んだり叩いたりする刺激
・受傷当日から無理にストレッチしすぎる行為
・悪い状態でのトレーニング開始
専門家でも筋肉内での現象となるので未知の領域になります。
重症のケースでは特に避けなければなりません。
ももかんに対する治療とリハビリ

打撲の程度によってもアプローチ方法は変化するので、専門家の指示に従うべきです。
リハビリとしては
・炎症を抑える
・腫れを引かせる
・関節可動域の獲得
・柔軟性の回復
・筋力回復
・軽運動から競技特性まで段階的にアップ
このような点を改善していく必要があります。
腫れを減らしていく
打撲でもとても腫れ上がるケースがあります。
腫れがあることで機能低下と可動域悪化はからなず生じてしまいます。
まずやるべきことは受傷から24時間でいかに腫れを抑えることができるかです。
応急処置から翌日までの24時間はしっかりと対応して腫れをどれだけ抑えられるかによって復帰時期が変化します。
1週間程度なら初期対応で変化してしまうということです。
48時間経過すると急性期から亜急性期となり炎症症状も落ち着いてくるのでやれることも増えてきます。
関節可動域を確保する
膝がどれだけ曲がるかはとても大切な点となります。
スポーツ動作の基本となるスクワットやパワーポジションが確保できないとそもそも競技できるレベルではないということです。
まずは非荷重で可動域を確保するベーシックなドリルとして上写真のように踵を滑らせての膝の曲げ伸ばしを行いましょう。
ヒールスライドと言いますが、やっていくうちに曲がりが良くなっていきます。
打撲の場合は筋挫傷なので引き伸ばされる際に痛みが出やすいです。
少しづつ改善していきますので、ストレッチでいきなり伸ばすよりも動きを出しながら自然に曲がりを出していくことで改善しやすいです。
力も入りにくく自分で動かすのが難しい場合、他動運動で動かしてもらうことも有効です。
ある程度曲がりが確保できるようになってからストレッチで筋肉全体を伸ばすようにしましょう。
筋力の回復
筋力もかなり低下してしまいます。
力が入らないと競技で踏ん張りが特に効かずパフォーマンスも悪い状態となり、さらに二次損傷の影響や別の部位の負担が大きくなってしまいます。
片足でコントロールできるレベルに回復させることがポイントとなります。
内出血後のアザは気にしない
受傷から数日経過するとあざが表面に広がってきます。
見た目はかなり痛そうに見えますが、表面化された内出血のあざは大きな問題にはならないので気にしなくても大丈夫です。
この辺りは見た目と痛みでは異なる点があます。
バスケットボールの試合に出場するには

バスケットボールの試合に出場するためにはいくつかの判断基準が必要になります。
膝が90度以上曲がること
打撲の際に確認することのひつとが膝の曲がり具合です。
膝が90度程度曲がることでパワーポジションの確保ができ、オフェンスとディフェンスポジションが最低でも確保できることが条件となります。
怪我をした選手が動作的にスクワット等を確認して大丈夫なのかを確認しましょう。
筋肉には3つの働きがあります。
・アイソメトリック・・・関節を固定して耐える使い方で安定感を出します
・コンセントリック・・・筋肉を縮むて関節を動かす使い方でパフォーマンスに影響
・エキセントリック・・・筋肉が伸ばされながら耐える使い方で怪我の予防や瞬発的な動きに影響
打撲の際に最も筋肉に負担がかかるのが、伸ばされながら耐える使い方のエキセントリック時です。
深くしゃがみ込んでから収縮させてジャンプをする際に一番負担がかかってきますので確認しましょう。
さらに判断すべきこと
・力が入るか・・・片足でのランニングステップができるか
・敏捷性の対応・・・特にディフェンスでは相手の動きに反応しなければならず瞬間的に動けるか
・テーピング装着・・・テーピングで圧迫して痛みの軽減や力の入り方の確認
この辺りは試合中であっても確認したいところです。
痛みがあっても通常歩行ができること
痛くても通常の歩行ができないようであればプレイすることで悪化するリスクが高いです。
受傷時のシチュエーションによっても休むべきシーンとやらなければならないシーンがあるかと思います。
さらに翌日試合があるのか、その試合で欠場して成績に影響してしまうのかなど、チームの状況によっても異なってくる点があります。
その辺りも含めて試合を出場させるべきか、欠場させるべきか決断しなければならないということです。
選手は動いてみないと分からないというケースも大変多く、プレイしてやはり無理ということもありますが、二次損傷をするリスクもあるのでプレイ前に判断、決断をしなければならないシーンが生じてきます。
再受傷しないように保護すること
打撲は再受傷することがよくあります。
同じ部位を再び痛めるとより悪化してしまいます。
パッド入りのスパッツを装着したりして事前の対策も必要となります。
特にガードの選手は打撲をする機会が多いので対応をしておくこともポイントとなります。
パッドの他としてテーピングで患部を圧迫したり筋肉をサポートすることも可能です。
テーピングに関しては別記事にて投稿する予定です。
まとめ
今回、【プロが解説】バスケ選手の大腿部打撲(モモカン)の対応方法として解説してきました。
大腿部打撲のモモカンは対応の仕方によって競技復帰にも大きく影響してしまう怪我です。
対応できるようにしておきましょう。
【まとめ】
・大腿部の打撲をモモカンと言います。海外ではチャーリーホースと言います。
・大腿部打撲は症状のレベルがあり軽視されやすいですがその分対応が難しい点があります。
・応急処置の仕方を間違えると復帰期間が大幅に長期化してしまうので最初の1日が大切です。
・最低でも90度以上膝が曲がらないとプレイすれば悪化してしまいます。
・内出血が骨化する骨化性筋炎となれば手術が必要となってしまいます。
この記事がバスケ選手の役に立てれば幸いです。
より具体的な打撲に対する対応方法はもう一つのブログ「ジャンクトレーナーのケアルーム」こちらで紹介しています。